徒然草 第三十六段

現代語訳

 「随分とないがしろにしてしまったから、きっと怒っているだろうなと、自分の惰性を責めながら、謝罪の言葉も見つけられずに放心していたら、彼女の方から、暇にしている家政婦さんはいませんか? いたら、一人紹介してくださいね、なんて言ってきてくれて、そんなことは誰にでも出来る芸当でもなく、予想外の出来事で、びっくらこいたよ。こういうハートを持った女の人は最高だね」と、ある人が言っていたけど、私も本当にそういう女の子がいればいいと思った。

原文

 「久しくおとづれぬ比、いかばかり恨むらんと、我が怠り思ひ知られて、言葉(ことのはなき心地するに、女の(かたより、『仕丁(じちやうやある。ひとり』など言ひおこせたるこそ、ありがたく、うれしけれ。さる心ざましたる人ぞよき」と人の申し侍りし、さもあるべき事なり。

注釈

 仕丁(じちゃう

  家の仕事をする下部、下僕。

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