徒然草 第百七十六段

現代語訳

 清涼殿の黒戸御所は、光孝天皇が即位した後、かって一般人だった時の自炊生活を忘れないように、いつでも炊事ができるようにした場所である。薪で煤けていたので、黒戸御所と呼ぶのである。

原文

 黒戸(くろどは、小松御門(こまつのみかど、位に即かせ給ひて、昔、たゞ(ひとにておはしましし時、まさな事せさせ給ひしを忘れ給はで、常に(いとなませ給ひける(なり。御薪(みかまき(すすけたれば、黒戸と言ふとぞ。

注釈

 黒戸(くろど

  清涼殿の北廂から弘徽殿までの西向きの戸。ここを黒戸の御所と呼ぶ。

 小松御門(こまつのみかど

  光孝天皇。仁明天皇の第三皇子。

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