現代語訳
藤原隆親が、鮭トバを天皇の食卓に出したことがある。「このような得体の知れない物を陛下に食べさせるつもりか」と、ケチをつける人がいた。隆親は、「鮭という魚を、差し上げてはならないのであれば問題でもあるが、鮭を乾燥させて何が悪いのだ。鮎も天日干しにして差し上げるではないか」と反論したそうだ。
原文
四条大納言 隆親卿 、乾鮭 と言ふものを供御 に参らせられたりけるを、「かくあやしき物、参 る様 あらじ」と人の申しけるを聞きて、大納言、「鮭といふ魚 、参らぬ事にてあらんにこそあれ、鮭の白乾 し、何条 事かあらん。鮎 の白乾しは参らぬかは」と申されけり。
注釈
藤原隆親。権大納言。料理人の家系に生まれる。
鮭の内臓を取り、そのまま乾かしたもの。