現代語訳
京極為兼が逮捕され、兵隊に取り囲まれながら豚箱に連行された。日野資朝が、羨望の眼差しで見つめながら、「ああ、とても羨ましい。この世に生まれた想い出に、私もあんな目に遭ってみたい」と呟いたそうだ。
原文
為兼大納言入道 、召 し捕 られて、武士どもうち囲みて、六波羅 へ率 て行きければ、資朝卿 、一条わたりにてこれを見て、「あな羨 まし。世にあらん思い出 、かくこそあらまほしけれ」とぞ言はれける。
注釈
京極為兼。定家の子孫にあたる歌人。二度にわたって島流しにされる。
六波羅探題。京都の守護、近畿地方の政治、軍事を総括した役所。
百五十二段に登場した日野資朝。後に夢が叶う。