現代語訳
街中の人は、人と会えば少しの間も黙っていることができないらしい。必ず何かを話す。聞き耳を立てると、多くは与太話である。浮ついた話。他人の悪口。そんな与太話は、他人を陥れ、自分の品格を下げるだけでクソの足しにもならない。
そして、与太話は、心に悪影響を与えるのに気がついていないから、尚更たちが悪い。
原文
世の人
相 逢 ふ時、暫 くも黙止 する事なし。必ず言葉あり。その事を聞くに、多くは無益 の談なり。世間 の浮説 、人の是非 、自他のために、失 多く、得 少し。
これを語る時、互ひの心に、無益 の事なりといふ事を知らず。