現代語訳
小野小町の生涯は、極めて謎である。没落した姿は『玉造小町壮衰書』という文献に見られる。この文献は三善清行の手によるという説もあるが、弘法大師の著作リストにも記されている。大師は西暦八百三十五年に他界した。小町が男どもを夢中にさせたのは、その後の時代の出来事だ。謎は深まるばかりである。
原文
小野小町 が事、極 めて定 かならず。衰へたる様は、「玉造 」と言ふ文 に見えたり。この文、清行 が書けりといふ説あれど、高野大師 の御作 の目録に入 れり。大師は承和 の初めにかくれ給へり。小町が盛りなる事、その後の事にや。なほおぼつかなし。
注釈
平安時代の有名な歌人。六歌仙の一人。美女だったという。
『玉造小町壮衰書』のこと。
三善清行。大内記、文章博士、大学頭、を経て、参議、宮内卿兼播磨守となる。
弘法大師、空海。真言宗の開祖。