現代語訳
男の子を狂わせる事といえば、なんと言っても性欲がいちばん激しい。男心は節操がなく身につまされる。
香りなどはまやかしで、朝方に洗髪したシャンプーのにおいだとわかっていても、あのたまらなくいいにおいにはドキドキしないではいられない。「空飛ぶ術を身につけた仙人が、足で洗濯をしている女の子のふくらはぎを見て、仙人からただのイヤらしいおっさんになってしまい空から降ってきた」とかいう話がある。二の腕やふくらはぎが、きめ細やかでぷるぷるしているのは、女の子の生の可愛さだから妙に納得してしまう。
原文
世の人の心惑はす事、
色欲 には如かず。人の心は愚 かなるものかな。
匂 ひなどは仮 のものなるに、しばらく衣裳に薫物すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。九米 の仙人の、物洗ふ女の脛 の白きを見て、通 を失ひけんは、まことに、手足 ・はだへなどのきよらに、肥え、あぶらづきたらんは、外の色ならねば、さもあらんかし。
注釈
大和の国の竜門寺にて飛行の術の修行を行っていた。「後ニ