現代語訳
住まいの建築は、夏を考えて造りなさい。冬は、住もうと思えばどこにでも住める。猛暑の欠陥住宅は我慢ならない。
庭に深い川を流すのは、涼しそうではない。浅く流れているほうが、遥かに涼しく感じる。小さい物を鑑賞する時は、吊すと影ができる窓よりも引き戸の方が明るくて良い。部屋の天井を高くすると冬は寒く照明も暗くなる。「新築の際には、必要ない箇所を造っておけば、目の保養になるし、いざという時に役に立つ事があるかも知れない」と、ある建築士が言っていた。
原文
家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き
比 わろき住居 は、堪へ難き事なり。
深き水は、涼しげなし。浅くて流れたる、遥 かに涼し。細かなる物を見るに、遣戸 は、蔀 の間 よりも明 し。天井の高きは、冬寒く、燈 暗 し。造作 は、用なき所を作りたる、見るも面白く、万 の用にも立ちてよしとぞ、人の定め合ひ侍りし。
注釈
左右に開ける扉。襖に似ている。
扉。受けに上げて留め金で吊すと、そのまま日よけになる。