現代語訳
屏風や襖などに、下手くそな絵や文字が書いてあると、みっともないと言うよりも、持ち主の品格が疑われる。
大体の事において、持ち物から持ち主の品性が察せられる場合が多い。常識を逸した高級品を持っていれば良いという話ではない。壊れないように、無骨に作って変形していたり、変わっているからと余計な部品を付けて、かえって使いづらくなっていたり、コテコテなのを喜んだりするのが良くないのだ。よく使い込んであって、わざとらしくなく、適正価格で作ってあり、その物が自体が良い物であればいい。
原文
屏風 ・障子 などの、絵も文字もかたくななる筆様して書 きたるが、見にくきよりも、宿の主 のつたなく覚 ゆるなり。
大方 、持 てる調度にても、心劣 りせらるゝ事はありぬべし。さのみよき物を持つべしとにもあらず。損ぜざらんためとて、品 なく、見にくきさまにしなし、珍しからんとて、用なきことどもし添 へ、わづらはしく好 みなせるをいふなり。古 めかしきやうにて、いたくことことしからず、費 もなくて、物がらのよきがよきなり。
注釈
襖や衝立、現代の障子など、部屋を仕切る衝立の類。