現代語訳
常磐井の太政大臣が、役所勤めをしていた頃、皇帝の勅令を持った武士が、大臣に接見した。その際に馬から下りたので、大臣はその後「先ほどの武士は、皇帝の勅令を持ちながら馬から下りやがった。あんな馬鹿たれを中央官庁で働かせるわけにはいかん」と言って、即座に解雇した。
勅令は馬に乗ったまま両手で高く上げて見せるのであって、馬から下りたら失礼なのだ。
原文
常磐井相国 、出仕し給ひけるに、勅書 を持ちたる北面 あひ奉 りて、馬より下 りたりけるを、相国 、後 に、「北面 某 は、勅書を持 ちながら下馬 し侍 りし者なり。かほどの者、いかでか、君に仕 うまつり候ふべき」と申されければ、北面を放 たれにけり。
勅書を、馬の上ながら、捧 げて見せ奉るべし、下 るべからずとぞ。
注釈
西園寺実氏。「相国」は、太政大臣のこと。
勅令を書いた文章。「陣中ニハ、