現代語訳
『一言芳談』という、坊さんの名言集を読んでいたら感動したので、ここに紹介しよう。
一つ。やろうか、やめようか迷っていることは、通常やらない方が良い。
一つ。死んだ後、幸せになろうと思う人は、糠味噌樽一つさえ持つ必要は無い。経本やご本尊についても高級品を使うのは悪いことだ。
一つ。世捨てのアナーキストは、何も無い状態でもサバイバルが出来なくてはならない。
一つ。王子は乞食に、知識人は白痴に、金持ちは清貧に、天才は馬鹿に成りきるべきである。
一つ。仏の道を追求すると言うことは、たいした事ではない。ただ単に暇人になり、放心していればよい。
他にも良い言葉があったが忘れてしまった。
原文
尊 きひじりの言ひ置きける事を書き付けて、一言芳談 とかや名 づけたる草子を見 侍 りしに、心に合ひて覚えし事ども。
一 しやせまし、せずやあらましと思ふ事は、おほやうは、せぬはよきなり。
一後世 を思はん者は、糂汰瓶 一つも持 つまじきことなり。持経 ・本尊 に至るまで、よき物を持つ、よしなき事なり。
一遁世 者は、なきにことかけぬやうを計 ひて過ぐる、最上のやうにてあるなり。
一上臈 は下臈 に成り、智者は愚者に成り、徳人 は貧に成 り、能ある人は無能に成るべきなり。
一 仏道を願 ふといふは、別 の事なし。暇 ある身になりて、世の事を心にかけぬを、第一の道とす。
この外もありし事ども、覚 えず。
注釈
浄土宗の僧侶たちの法語。百六十条を収録した語録集。
漬け物樽のこと。
身分の高い人、低い人。