現代語訳
大覚寺の法皇御所で、側近どもが「なぞなぞ大会」をやっていた。そこへ医者の丹波忠守がやってきた。そこで三条公明が「忠守は、我が国の人間には見えないけど、どうしてか?」という問題を作ったら、誰かが「中国の医者」と答えて笑い合っていた。「からいし」は、中国製の徳利である「唐瓶子」と、没落した「平氏」を掛けた駄洒落なのだが、ドクターは非道くご立腹の様子で、そこから立ち去った。
原文
大覚寺 殿 にて、近習 の人ども、なぞなぞを作りて解 かれける処 へ、医師 忠守 参りたりけるに、侍従大納言 公明卿 、「我が朝 の者とも見えぬ忠守かな」と、なぞなぞにせられにけるを、「唐医師 」と解 きて笑ひ合はれければ、腹立 ちて退り出 でにけり。
注釈
蓮華峰寺御所。京都市右京区嵯峨にある。
(後宇多)法皇の側近。
丹波氏。宮内卿。中国からの帰化人の子孫で『源氏物語』の注釈家。
侍従
三条公明。歌人。