現代語訳
清涼殿の黒戸御所は、光孝天皇が即位した後、かって一般人だった時の自炊生活を忘れないように、いつでも炊事ができるようにした場所である。薪で煤けていたので、黒戸御所と呼ぶのである。
原文
黒戸 は、小松御門 、位に即かせ給ひて、昔、たゞ人 にておはしましし時、まさな事せさせ給ひしを忘れ給はで、常に営 ませ給ひける間 なり。御薪 に煤 けたれば、黒戸と言ふとぞ。
注釈
清涼殿の北廂から弘徽殿までの西向きの戸。ここを黒戸の御所と呼ぶ。
光孝天皇。仁明天皇の第三皇子。