徒然草　第百八十七段

現代語訳

　プロフェッショナルは、例えヘッポコでも、器用なアマチュアと比べれば、絶対に優れている。油断せず、万全に備え、対象を軽く見ることはない。我流とは違うのだ。

　アートやビジネスに限らず、日常生活や気配りは、不器用でも控えめなら問題ない。反対に、器用でも、気ままだと、失敗を招く。

原文

　万（よろづ）の道の人、たとひ不堪（ふかん）なりといへども、堪能（かんのう）の非家（ひか）の人に並ぶ時、必ず勝る事は、弛（たゆ）みなく慎みて軽々（かるがる）しくせぬと、偏へに自由なるとの等しからぬなり。

　芸能・所作（しよさ）のみにあらず、大方（おほかた）の振舞（ふるまひ）・心遣（づか）ひも、愚（おろ）かにして慎めるは、得（とく）の本（もと）なり。巧（たく）みにして欲しきまゝなるは、失の本（もと）なり。