現代語訳
十月は「神の居ない月」と呼び、祭事を慎まなければならない、と書いてある文献はない。参考になる文章も見つからない。もしかしたら、十月はどの神社にも祭事がないので、こう呼ばれるのだろうか。
この月には、神々が伊勢の皇大神宮に集まるという説もあるが、それも根拠がない。事実ならば、伊勢では特別な祭でもありそうだが、それもない。十月は天皇が神社に出かけることが多くなる。しかし、ほとんどは不幸がらみである。
原文
十月 を神無月 と言ひて、神事 に憚 るべきよしは、記 したる物なし。本文 も見えず。但 し、当月 、諸社の祭 なき故 に、この名あるか。
この月、万 の神達 、太神宮 に集り給ふなど言ふ説あれども、その本説 なし。さる事ならば、伊勢には殊 に祭月 とすべきに、その例もなし。十月、諸社の行幸 、その例も多 し。但 し、多 くは不吉の例なり。
注釈
伊勢の皇大神宮のこと。