現代語訳
メナモミという草がある。マムシに噛み付かれた人が、この草を揉んで患部にすり込めば一発で治るという。実物を見て知っておくと、いざという時に役立つ。
原文
めなもみといふ草あり。くちばみに
螫 されたる人、かの草を揉 みて付けぬれば、即 ち癒 ゆとなん。見知 りて置 くべし。
注釈
めなもみ
やぶたばこ。
くちばみ
マムシのこと。
メナモミという草がある。マムシに噛み付かれた人が、この草を揉んで患部にすり込めば一発で治るという。実物を見て知っておくと、いざという時に役立つ。
めなもみといふ草あり。くちばみに
螫 されたる人、かの草を揉 みて付けぬれば、即 ち癒 ゆとなん。見知 りて置 くべし。
めなもみ
やぶたばこ。
くちばみ
マムシのこと。
三蔵法師は、インドに到着した際に、メイド・イン・チャイナの扇子を見てはホームシックになり、病気で寝込むと中華料理を所望したそうだ。その話を聞いて「あれ程の偉人なのに、異国では甘ったれていたのだな」と誰かが漏らした。それを聞いた弘融僧都が「心優しいお茶目な三蔵法師だ」と言ったのは、坊主臭くなく、むしろ深みがあるように思えた。
法顕三蔵 の、天竺 に渡りて、故郷の扇 を見ては悲 しび、病に臥 しては漢の食 を願ひ給ひける事を聞きて、「さばかりの人の、無下にこそ心弱き気色を人の国にて見え給ひけれ」と人の言ひしに、弘融僧都 、「優 に情 ありける三蔵 かな」と言ひたりしこそ、法師のやうにもあらず、心にくゝ覚えしか。
中国東晋時代の高僧。同志とインドに渡り、遺跡を巡り、梵語を学び、帰国後、執筆活動を行った。
インドのこと。
仁和寺の僧侶。弘舜僧正の弟子。
仁和寺に暮らしていたある坊さんは、老体になるまで石清水八幡宮を拝んだことがなかったので、気が引けていた。ある日、思い立って、一人で歩いて参拝することにした。八幡宮の付属品である、極楽寺と高良神社だけ拝んで「これで思いは遂げました」と思いこみ「八幡宮はこれだけか」と、山頂の本殿を拝まずに退散した。
帰ってから、友達に「前から思っていた事を、ついにやり遂げました。これまた、噂以上にハラショーなものでした。しかし、お参りしている方々が、みんな登山をなさっていたから、山の上でイベントでもあったのでしょうか? 行ってみたかったのですが、今回は参拝が目的だったので、余計な事はやめておこうと、山頂は見てこなかったのです」と語った。
どんな些細なことでも、案内がほしいという教訓である。
仁和寺 にある法師 、年寄 るまで石清水 を拝 まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩 より詣 でけり。極楽寺 ・高良 などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
さて、かたへの人にあひて、「年比思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意 なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。
少しのことにも、先達 はあらまほしき事なり。
京都府左京区御室にある真言宗御室派の大本山。
京都府八幡市男山の山頂にある石清水八幡宮。
石清水八幡宮付属の極楽寺と高良神社。