現代語訳
「自分は不幸な人間だ」などと悩んだり嘆いたりしている人が、頭の毛をカミソリでつるつるにするように、ものの弾みで悟りきってしまうのではなくて、ただ意味もなく、生きているというよりは死んでいないといった感じで、門を閉め切ってひきこもり、意味もなくだらだらと日々を漂っているのも、ある意味では理想的である。
原文
不幸に
憂 に沈める人の、頭 おろしなどふつゝかに思ひとりたるにはあらで、あるかなきかに、門 さしこめて、待つこともなく明 し暮したる、さるかたにあらまほし。
顕基 中納言の言ひけん、配所の月、罪なくて見ん事、さも覚えぬべし。
注釈
源