徒然草 第三十四段

現代語訳

 甲香というのは、法螺貝に似た小さな貝の細い先端に付いている蓋のことだ。

 金沢文庫の入り江にたくさん転がっていて、土着の者が「へなだりと言うんだよ」と言っていた。

原文

 甲香(かひこうは、ほら貝のやうなるが、小さくて、口のほどの細長にさし(でたる貝の(ふたなり。

 武蔵国金沢(むさしのくにかねさわといふ浦にありしを、所の者は、「へなだりと申し(はべる」とぞ言ひし。

注釈

 甲香(かいこう

  お香の材料になる田螺のへた。「甲」は「貝」の当て字。

 武蔵国金沢(むさしのくにかねさわ

  現在の金沢文庫。兼好法師が称名寺を訪ねたことが知られている。

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