現代語訳
久我の太政大臣が、皇居の関係者以外立ち入り禁止の間で水を飲もうとしたら、女官が焼き物のカップを持ってきた。太政大臣は「柄杓を持ってきなさい」と言って、それで飲んだ。
原文
久我相国 は、殿上 にて水を召しけるに、主殿司 、土器 を奉 りければ、「まがりを参らせよ」とて、まがりしてぞ召しける。
注釈
清涼殿の殿上の間。公家や殿上人だけが伺候できる。
検非違使庁の長官のこと。
主殿司に属し雑務を受け持つ女官。
素焼きの器や杯のこと。
まがり
不詳。酒や水を飲む器と思われる。